JOURNALbox

5th
May ‘09

本を読むこと

やはり、連休中は緩やかな時間が流れています。
私はこの連休中、電車での移動が多かったこともあり、たまっていた建築雑誌と何冊かの小説を読みました。最近、太宰治の小説を3冊読み返し、その激しく強い、叫ぶような言葉にあらためて「すごい」と思ったのですが、特に印象に残っている『斜陽』について。
dazai
『斜陽』の中に出てくる『道徳革命』という言葉=この世にはさまざまな生き方があっていいという価値の多様化を伝えているメッセージ。戦後、価値観が抑制された社会の中で、自分の心に正直ならば、いわゆる“常識的”な生き方をしなくてもよい、こうあらねばならぬと一つに決めてしまうやり方を排しているのだと思います。
一見価値観が多様化しているような今でも、自分も含め実は価値観というような自己認識もなくふわふわと生きている人が多いと思われる中で、はっとするような言葉でした。
ちょっと難しいことを書いてしまいましたが…。「小説を読むこと」と「建築をつくること」=「夢想の世界」と「現実の世界」。そのズレをきちんと受け止めたり、ときにはどちらかの世界に意識的に近づいていったり、そんなことができたらいいな~とぼんやり思っています。

AUTHOR : さかきばら