JOURNALbox

9th
Jul ‘11

作品として生きること

私の入っているビルの1Fにはギャラリーがあり、それはそれは素敵で個性的なマダムがいる。そのマダムから「ぜひ、行ってみて」と教えていただいた、ギャラリーに行く。
ジュート(麻)で造形作品をつくっていらっしゃる、伊藤祐之さんの展示。
麻の布や糸、紐を何層も何層も重ねて成形し、アクリル絵の具で色を重ねている。
「無垢の麻です」とおっしゃる伊藤さんの言葉が、とても新鮮。布とか糸は軽やかなものと捉えていたが、塊となった麻は、なんとも言えない存在感をもっていた。
ITOU
建築は、設計者自身だけでなく、建て主や施工者といっしょにつくりあげていく中で、いろいろな可能性が広がっていくもの。
一方、ひとりで黙々の創作活動は、自分と対峙することで、それはスゴいことだけど、実にシンドイだろうと、日頃から思っていた。
そのことを伊藤さんに話したら
「私たちがつくっているものも、作家が自己満足だけで創作するのではなく、作品が認められて、作品として生きていることが大切。ギャラリーの中だけでなく、作家の手から離れ家でも外でもどこにあっても作品として魅力をはなっていて欲しい」とおっしゃった。
あー、そうなんだと思った。建築だって、人に愛され、その場所に馴染んでいるものこそ、独特の存在感をもつ。作品として、しっかり生きていくこと。そのことこそ大切。
そんな、あたりまえのことに気づかされた、よき時間だった。

AUTHOR : さかきばら