ル・コルビジェの建築を、ずっと見たいと思っていました.特にロンシャンの教会を.
パリから鉄道で4時間半.スイスとドイツの国境近くのにあるこの教会は、山を登っていくにつれむっくりと姿を現し、静かに力強く佇んでいました.
四方どこから見ても違う表情を見せる外観に圧倒され、ずっと思い続けていた建築に出会った嬉しさの一方、冬の誰もいない場所に在る光景は『生きている建築』という感じがしなくて…少し寂しくも感じました.
が、内部に入った瞬間、そんな寂しさは吹っ飛びました.暗闇の中に色ガラスの窓から差し込む光があふれ、近づくと強烈になり、遠ざかると点のように消えていく…その美しさというか不思議さに、自分がこの場にたっているという感覚がすらなくなる気がしました.
ロンシャンの教会は、よく外観の造形から彫刻的といわれますが、私は外観よりも、内部空間の光の質が素晴らしい『光の彫刻』のような印象をもちました.
もうひとつ.ラ・トゥレット修道院について.
ロンシャンよりも数年後に建てられたコルビジェの作品で、同じコンクリートの建物ですが、その造形や質感は異なります。ただ、ロンシャンと同様光の扱い方は見事で、聖堂では独特の造形のトップライトやスリットから、光を拡散させたり、色に反射させたりして,祈りの場にふさわしい空間がつくられていました.
ラ・トゥレットでよかったのは、コンクリートの枠で細かくつくられた窓.そこから見える風景は、分節されているせいか、あるいは当時のガラスのせいか、なぜか揺らいでいるように見えました.
最後に振り返ったとき、その粗々しい打放しのコンクリートを表情が、冬の重い灰色の空と妙にあっていて、ふとコルビジェの晩年の作品であるということを意識しました,
旅先でのスケッチより